摘要:なんだかんだ言って、日本料理店を開くって、中国人にとってそんなに難しいことじゃないんですよ。いや、本気で言ってるんです。この間、友人が「奇跡だ…」とため息をつきながら、スマホの画面を見せてきました。そこには、ある回転寿司チェーンの順番待ちが2000組を超え、待
なんだかんだ言って、日本料理店を開くって、中国人にとってそんなに難しいことじゃないんですよ。
いや、本気で言ってるんです。
この間、友人が「奇跡だ…」とため息をつきながら、スマホの画面を見せてきました。
そこには、ある回転寿司チェーンの順番待ちが2000組を超え、待ち時間は10時間以上、ダフ屋が売る整理券の値段で高級なフォアグラ寿司が10皿は買えるという、信じられない光景が映し出されていました。
まるでアイドルのコンサートチケット争奪戦みたいですよね。
これって、人々が財布で「庶民的な日本料理」に投票している、何よりの証拠じゃないですか。
かつて日本料理といえば、何を思い浮かべましたか?
静寂な空間、作務衣をまとった寡黙な職人、一切れ数千円もする大トロ、そして、その値段にふさわしい作法を求められるような、息苦しいほどの高級感…。
まるで手の届かない高嶺の花でした。
我々一般庶民からすれば、それは特別な日の、特別なご馳走。
日常とはかけ離れた、一種の儀式みたいなものだったわけです。
ところが、どうでしょう。
今や街角を見渡せば、「N多寿司」のような一杯20元(約400円)でさっとテイクアウトできる店が、全国に2000店以上も存在するんです。
洗い物すらない、という潔さ。
まさに現代人のライフスタイルにぶっ刺さるビジネスモデルです。
他にも、「鮮目録」は“全品加熱”という、本場から見れば邪道かもしれないけれど、中国人の胃袋をがっちり掴む戦略で1000店舗を超え、その勢いは海外にまで及んでいる。
これ、もう革命ですよ。
何が変わったのか?
魔法でも起きたのでしょうか。
いいえ、魔法使いなんていやしない。
大人の世界にはサンタクロースがいないのと同じで、全ては泥臭い現実の積み重ねです。
その答えは、我々の足元、この広大な中国の大地にありました。
そう、恐ろしいほどに成熟しきった「国内サプライチェーン」という名の巨大な羅網が、全てをひっくり返したんです。
ちょっと前まで、日本料理店のオーナーが一番頭を抱えていたのは何だと思いますか?
それは「食材」です。
新鮮なサーモンはノルウェーから、上質なウナギは日本から…。
空輸コスト、関税、そして不安定な供給。
これらが価格に上乗せされ、我々の手の届かないものにしていたわけです。
しかし、例の原発処理水問題が、ある意味でこの流れを決定的に加速させました。
輸入に頼れなくなった結果、国内の供給元が猛烈な勢いで育ったのです。
今や、青海省や新疆ウイグル自治区の澄んだ水で育った国産サーモンが、その辺のスーパーで普通に手に入ります。
驚くことに、これらの養殖場は「5G+スマート漁業」なんていうハイテク技術まで駆使している。
ウナギに至っては、福建省や広東省で世界の7割以上が養殖されているというから、もう笑うしかありません。
我々はウナギの世界的な供給基地の上で暮らしていたわけです。
話は魚だけにとどまりません。
居酒屋の華である「焼き鳥」。
これも、国内の大手鶏肉加工メーカーが、ありとあらゆる部位の串を「生串」と「調理済み串」の両方で供給しています。
皮、もも、つくね、なんでもござれ。
ある会社なんて、日本の大手餐饮チェーンにも卸しているというから、品質は折り紙付き。
カツ丼用の豚カツ、おつまみのタコ焼き、ラーメン用のチャーシューまで、専門のサプライヤーが控えています。
極端な話、オーナーはカタログを見て、「これとこれ」と指をさすだけで、店のメニューがほぼ完成してしまう。
まるでレゴブロックを組み立てるような感覚ですよ。
米だってそうです。
「コシヒカリ」じゃなきゃ寿司じゃない?
大丈夫。
日本の新潟県と同じ緯度にある農場で、ちゃんと「越光寿司米」が作られています。
玉子焼きや温泉卵のような加工品も、専門の食品工場が完璧な半製品にして届けてくれる。
ワサビ、醤油、味噌、照り焼きソース…。
調味料一つとっても、もはや輸入品を探す方が難しいくらいです。
ここまでくると、もはや日本料理は「秘伝の技」でも「高尚な芸術」でもなく、非常に合理的な「組み立て産業」へと姿を変えたことがわかるでしょう。
かつては職人の長年の経験と勘だけが頼りだった世界が、標準化され、マニュアル化されたのです。
これはある意味で、日本料理の“民主化”と言えるかもしれません。
もちろん、これに対して眉をひそめる人もいるでしょう。
「そんなものは本当の日本料理じゃない」と。
確かに、中国で独自に進化した「日式料理」は、本場のそれとは似て非なるものかもしれません。
寿司ネタはサーモンとエビが中心で、アボカドやマンゴーが乗っかり、甘いマヨネーズソースがたっぷりかかっている。
これはもう、カリフォルニアロールがアメリカで生まれたのと同じ現象です。
文化が伝播し、土着化する過程で、必ず起きる化学反応みたいなものです。
批判するのは簡単です。
でも、考えてみてください。
海底撈が始めた回転寿司店「如鮨寿司」は、一人当たり88元(約1760円)で200近くのメニューを楽しめる。
これだけの体験を、この価格で提供できるようになった背景には、先人たちが泥水をすすりながら築き上げてきたサプライチェーンという土台がある。
これを無視して、ただ「本物ではない」と切り捨てるのは、あまりにも傲慢じゃないでしょうか。
結局のところ、ビジネスは理想論だけでは成り立ちません。
重要なのは、ターゲットとする客層が何を求め、何に価値を感じるかを見極めること。
多くの中国人にとって、今の日本料理は「ハレの日の贅沢」ではなく、「ちょっと気分を上げたい時の日常食」なんです。
だからこそ、早くて、安定していて、そして何より手頃な価格が正義になる。
中国人にとって日本料理店を開くのが難しくなくなった、というのは、決して技術や文化を軽んじているわけではありません。
むしろ逆です。
かつて一部の職人だけがアクセスできた聖域が、テクノロジーとロジスティクスの力によって解放され、誰もが挑戦できる土俵になった。
参入障壁が下がった今、本当の勝負はここから始まります。
同じ“レゴブロック”を使って、誰が一番クリエイティブで、人の心を掴む作品を作り上げられるのか。
さあ、あなたなら、この完璧に揃ったキッチンで、どんな一皿を作りますか?
来源:皮孩战士gyz
